資源プラ協会なごやラボの本堀です。梅雨らしく雨がしとしと降っていますね。
さて、当協会で月1回開催される理事会においては、リサイクルに限らずプラスチックに関する様々なテーマが議論されています。
高い専門性を有する経験豊富な理事により、社会動向、法規制、技術、需給動向、会員の皆様からのお問い合わせ、展示会への出展など様々な内容が多角的に協議されています。
その結果は、会員ページやセミナー、展示会などの場で還元させて頂いています。
先日、開催された理事会において、「PETボトルのリサイクルビジネスの持続性」というテーマが取り上げられました。
PETボトルのマテリアルリサイクルは、古くは中国を中心とする海外へ輸出され、繊維に加工されるスキームが中心でした。
その後、シート加工され、卵パックやトレーなどに利用させるスキームも登場し、一定のリサイクル市場を形成するに至りました。
ところが近年、「PETボトルをPETボトルに再生する」という「ボトルtoボトル」というスキームが台頭し、”リサイクルPETボトル”を使っている事を売りにしている飲料商品も見掛ける様になりました。
ボトルtoボトルの台頭により、従来では見られなかった”廃棄PETボトルの不足”という椿事も起きており、再生PETのシート成形加工を行っておられる方からも、「もう、廃棄ボトルの取り合い状態だよ・・・」との声を聴くようにもなりました。
何だか不思議な感じですね。
理事会では、このPETボトルのマテリアルリサイクルビジネスの持続性について、様々な意見が交わされたのですが、紙面の関係でここでは一点だけ示します。
下図をご覧下さい。この図はPETボトルリサイクル推進協議会が公表している清涼飲料等用ボトル向けのPET原料の需要動向をまとめたものです。
このグラフを見ると、清涼飲料等用ボトル向けのPET原料の需要は拡大し続けている事が分かります。
背景には清涼飲料市場の拡大があるのですが、市場の拡大と共に廃棄されるPETボトルも増加していく事が伺えます。
その様な状況下でボトルtoボトルという新たなスキームが台頭してきた訳です。
これはリサイクルの新たな流れが出来た事を意味するのですが、従来の繊維やシートといった「カスケード型のリサイクル」とは異なり、再び同じ商品(PETボトル)に戻す「水平リサイクル」という形で新たなビジネススキームであると見なす必要があります。
現在の所、先に述べました様に清涼飲料の需要が拡大しているため、再生PETボトルの受け入れ先も余裕があると考えて差し支えないと思います。
しかし他方で、「処理コストを”誰が”負担するのか?」という課題を十分に検証する必要があります。
ボトルtoボトルの場合、当然の事ながらバージン材よりも再生材の方が回収や処理(中間処理、再生処理)のコストがかさみますので、これを「環境コスト」という形で商品に転嫁している訳ですが、これを消費者がすんなりと納得して受け入れてくれるのか・・・、懸念が残ります。
現在は、「人件費の高騰に伴う物流コストの上昇」や「円安に伴う原料コストの上昇」という理由にかこつけて、これらの要因に”付加する形”で環境コストを盛り込んでいる訳です。
今後、拡大し続ける清涼飲料需要が停滞した場合、コスト面で不安が残る再生PETボトルの立ち位置がどうなるのか、ボトルtoボトルというマテリアルリサイクルというビジネスを持続的に続ける事が可能であるのか、我々はしっかりと見据えていく必要があると思います。
先に述べました様に、現在、廃棄PETボトルの不足という椿事が起きており、従来から行われている繊維やシートへのマテリアルリサイクルが不利な立場に置かれています。
これはボトルの様に直接最終製品に「環境コスト」の転嫁を行う事が出来ない事に由来しているからでありまして、「ボトルtoボトル」というスキームが従来のスキームを圧迫する事を意味しています。
マテリアルリサイクルを持続的に営むためには、出口戦略の確立、つまり再生原料の利用先の確保が大きなポイントとなります。
ボトルtoボトルに偏る事で、従来のスキームが圧迫された結果、ボトル需要が停滞した時に一気にPETボトルリサイクルシステム全体が不具合を起こす可能性があるのです。
繰り返しますが、マテリアルリサイクルの持続性は、「川下の選択肢(=再生原料の用途)」の多様性によって支えられています。
我々、資源プラ協会は、市場動向や社会情勢、法規制、技術などを多角的に見つめ、様々な背景を持つ専門家の立場で、安定で持続的なリサイクルの輪の構築と運用を目指しています。
毎月の理事会では、こんなお話しが繰り広げられているのです。
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