資源プラ協会なごやラボの本堀です。ゴールデンウイーク真っ盛り、行楽シーズンですね。
しかし、行楽も結構なのですが、現在の世界情勢に目を向けてみると混沌を極めている状況です。
特に我が国では目立って報道されていませんが、中国の景気減退が顕著になって参りました。
そこで先日開催された月一回の資源プラ協会の理事会において、「中国景気の減退がプラスチック産業やプラスチックリサクルビジネスにどの様な形で影響を及ぼすのか?」という点について意見交換を実施しました。
不動産バブルの崩壊など中国経済の先行きは大変不安定になる事が想定されていましたが、ここに至って経済統計でもその兆しが顕著になって参りました。
例えば、中国における最近の「消費者物価指数(CPI)」の推移を見てみますと、2022年の後半から「結果」が「予想」を下回る状況が発生し、2023年の6月にCPIの前年同月比が0となりました。その後、前年同月比がマイナスとなり、消費者物価が前年を割り込んでいる、つまり「デフレ傾向」にある事が顕著となってきました。
「結果」が「予想」を下回る速度で物価が下落し、デフレが急速に進行している事が伺えますね。
これは失業率が高まっている若年層の消費、特に自動車やスマホなどの耐久消費財に対する消費の減退が大きく影響していると言われており、中国が“景気の潮目”に至った事を意味しています。
また米中対立が先鋭化した事の影響も大きく、外資系企業は中国を見限りつつあると言えます。下図をご覧下さい。
これは中国国家外貨管理局が発表した海外からの中国に対する直接投資額の推移をまとめたものなのですが、2023年の対中直接投資は330億ドルの流入超過と前年(2022年)比で82%も減少しています。
この事は、中国から外資系企業が撤退、つまり資金の引き上げ(流出)が起きている事を表しています。このままではマズいので、中国政府は景気の刺激のための金融緩和を行っています。
いずれにせよ、中国の景気は潮目を迎えており、プラスチック産業においも、大きく方針の転換が進められています。
その一つが、「国内消費から海外輸出への転換」です。
2000年以降、中国は急激な経済成長を遂げるため、海外からプラスチック廃棄物を含めたプラスチック原料や製品を輸入し続けてきました。
北京オリンピック以降は、米国や周辺諸国との軋轢が増し、関係悪化による経済制裁等のリスクを軽減し、同時に自国経済の持続的発展のためにプラスチック原料の国内自給化を目指すために、過剰ともいえる国内投資を断行してプラスチック原料の国内生産能力を高めて参りました。
特にプラスチック廃棄物については、環境汚染対策の観点から輸入ルートをほぼ完全に閉ざした事は皆様御存知であると思います。
しかし、現在、景気の潮目が変わり、中国の景気が減退するに至って、過剰に生産され続けてきたプラスチック原料の“行き先”が無くなってしまったのです。
そこで、中国は余剰在庫の整理の為にプラスチック原料の輸出を強化しました。下図にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)の直近10年間の輸出量推移を示します。
いずれも2020年頃から輸出量が増加しており、中国国内でのプラスチック原料の消費量が減退した事が伺えます。
紙面の関係で輸出先の内訳は割愛させて頂きますが、
1.近年、経済成長が著しいインド、ベトナム、トルコ向けが増加傾向にある
2.ウクライナ侵攻の影響で西側諸国から経済制裁を受けているロシア向けの輸出量が急増している
の点は押さえておいて頂きたいです。
会員の皆様には別途、理事会で作成した解説動画の公開やレポートで詳細を報告させて頂きます。
世界の形が著しく変化する現在、安定で持続的な資源プラ物流の構築と維持のため、資源プラ協会は様々な情報を得るためにアンテナを張り巡らし、得られた情報を深い知識と経験を有する専門家集団が多角的に検証しています。
それはそれとして、“中国の今後”、とても気になりますね。
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