突然ですが、ひとつクイズを出題します。下の写真をご覧下さい。
これは物流関係で排出されたストレッチフィルムが中間処理施設に持ち込まれたものです。
ストレッチフィルムの多くはポリエチレン系の素材が使用されていますが、上の写真には別の素材も混入しています。
どこの部分にその“異物”が混じっているのか分かりますか?
答えは後ほどという事で・・・。
さて、ストレッチフィルムは物流関係などで幅広く利用されており、荷を柔軟に固定する事で荷崩れを防ぎ、効率的な物流環境の維持を支える縁の下の力持ちの様な素材です。
物流の際に大きく汚れたり、破損したりする事も少なく、他素材を適切に分別し、異物を除去する事ができれば、「素材の単一化」を比較的容易に達成する事ができます。
その結果、再生処理を適切に施す事ができれば、高品質の再生プラスチック原料に生まれ変わる事が可能でありまして、まさに資源プラの代表格の一つであると言えます。
中間処理の現場では、持ち込まれたストレッチフィルムから他素材のプラスチックや紙類、・金属類などの異物が取り除かれた後に「圧縮処理」が施されます。
圧縮処理は広く行われている破砕処理に比べ、
(1)作業を行う上での安全性が高い (2)火災や爆発などの発生頻度も低い (3)粉塵や騒音・振動など労働衛生管理上の問題となるアウトプットが少ない (4)処理後の圧縮品のハンドリング性が高く、保管管理も容易
などのメリットを有しています。
他方、圧縮処理装置では多くの破砕処理装置が保有している磁選や比重選別などの「異物分離機構」を備えておらず、圧縮処理を施す際には作業者により異なる種類のプラスチックを識別し、取り除く必要があります。
上右の写真はストレッチフィルムから取り除かれた異なる種類のプラスチックや紙などの異物です。
まさに現場作業者による手選別の技量に依存している訳でありまして、最初にお出ししたクイズも現場での手選別の様子を実感して頂きたいとの思いで見て頂きました。
どうです?どこの部分にその“異物”が混じっているのか分かりましたか?
答えを下写真に示します。
写真の中央より少し上の部分に、ポリプロピレン(PP)製梱包紐(玉巻紐)が1本紛れ込んでいました。
写真の中央より少し下の部分にはストレッチフィルム(PE)が捻じれて紐の様になっているものも見られますが、これは見た目では分かりませんよね。
そこで両者を取り出し並べてみた写真を示します。
見易い様に背景を青色にしていますが、これでも見た目では両者を識別する事は難しいです。
ところが現場では、作業者が「目で見て、手で触れる」事で両者を適切かつ素早く識別しています。
確かにストレッチフィルムは自着性があるため、PP製の梱包紐とは明らかに手触りが異なります。
しかし考えてみて下さい。作業者は安全や衛生のためにゴム手袋をはめているんです。その上で触感や質感を感じ取って識別をしているというのはスゴイ事ではないでしょうか?
現在、様々なタイプのプラスチック識別装置が開発され、上市されています。
近赤外線やラマン光、X線など様々な光源を使って識別するのですが、これはこれで大変便利なものです。
ですが、やはり人間以上の識別装置は無いんですよね。
作業者の知識と経験に基づいた「勘」による識別というものは、事業を営んでいく上で大きな財産となります。
先日、とある政令指定都市の役所の課長さんとお話しさせて頂いたのですが、「これからは自動化が進むからこういった単純作業は誰がやっても同じじゃないの?」とうそぶいていました。
全く救いようのない戯言でありまして、どれだけ優れた装置を導入してもそれを使いこなすのは人間です。
ここにはパラメータなどの数値だけではなく、その「人間の経験知」に基づいた「一見アナログな判断」というものが絶対的に必要となります。
確かに誰がやっても同じ様な仕事を毎日単調にボケっとこなしながら定年まで生き長らえている連中にはこんな事は分からんでしょうが・・・。
こんな訳で皆様の事業所でも、もう一度「ヒト」の能力こそが資源プラ製造を支えているという絶対的な事実に目を向けて頂きたいのです。
そしてこの能力やスキルは事業所内で共有し、次世代に繋いでいく必要があります。
資源プラ製造を支える現場の弛まぬ努力と育んできたスキルについて知って頂きたい。
今回はクイズを通じてこんなお話しをさせて頂きました。
Comments