この会員ページでもたびたび取り上げさせて頂いていますが、現在、「資源プラ」という様々な取り組みが着々と進行しています。
新型コロナウイルスのパンデミックによる経済停滞、激化する米中の対立、そしてバーゼル条約の改定などにより国際的なプラスチックリサイクルの輪は大きな危機に瀕しています。
この未曾有の厳しい状況を鑑み、パナ・ケミカルの犬飼社長が中心となって、“品質の向上”による円滑な静脈物流を維持するため、従来、「廃プラスチック(廃プラ)」と呼ばれてきたプラスチック廃棄物について、新たに「資源プラスチック(Resource Plastic)(通称:資源プラ)」という概念を提唱するに至りました。
「資源プラ」に関しては、以前より度々この会員ページで紹介させて頂いておりますが、とても重要な考え方なので、あえて“おさらい”をさせて頂きます。
「資源プラ」とは、有償取引に供されるプラスチック廃棄物の前処理後、中間処理後の処理物に適用される概念であり、取引上、品質面で一定の基準を満たす処理物について「資源プラ」との呼称を付与する事で、市場経済に叶った形での、流通上のインセンティブを付与するものです。
ざっくばらんに言いますと、廃プラスチック処理物の「品質」の基準というものを明確に定め、この基準を満たす品質面に優れる廃プラスチック処理物については、「資源プラ」と呼び習わす事で、ユーザーの皆様に品質面で優れる事をアピールするという取り組みです。
資源プラの基本的な考え方を以下にまとめておきます。
さて、この資源プラスチックの定義ですが、専門家を交えた協議を通じて、以下の様に定められました。
基本的には、「プラスチック廃棄物に適切な前処理や中間処理を施すことで、再生プラスチック原料の基材として、有価で取引する事が出来る品質を保有する処理物の事」を資源プラと称するですが、品質面のみならず、関係法令による規制も遵守し、また取引上の商慣行等の基準についても満たす事を要件としています。
この資源プラという考え方を普及させるため、2018年に一般社団法人資源プラ協会が設立され、代表理事にパナ・ケミカルの犬飼社長が就任致しました。
資源プラ協会では、セミナー開催などによる資源プラの啓蒙活動に加え、プラスチックリサイクルに関する調査、大学などの学術機関との共同研究、装置メーカーとの共同企画開発、政府の諮問会議への専門家の派遣など様々な活動を展開しています。
中でも「資源プラスチックに関する認定制度」を立ち上げ、運営しているのはこの業界でも初めての試みであり、業界誌などでもたびたび取り上げられています。
この認定制度(資源プラ認定制度)は現在、「資源プラ製造事業所認定制度」と「資源プラ製造装置認定」から構成されています。
資源プラ製造事業所認定(以下、事業所認定と略します)は、プラスチックのマテリアルリサイクルに関係する事業所(排出事業者、中間処理業者、再生業者等)に関し、資源プラ制度を理解し、資源プラを製造する仕組みや能力を有している事業所を資源プラ協会による審査を経て認定するというものです。 資源プラ協会では、物流や法務、技術に関する有識者の諮問を経て認定を行うための基準(認定基準)を定めています。 事業所認定については、 (1)「資源プラ」という取り組みに対する理解と賛同が得られているか? (2)素材毎の分別が行われ、全量再生プラスチック原料の基材として直接利用する事ができるか? (3)処理(前処理、中間処理、再生処理)は適切に行われているか? (4)関連する法令や商慣習に対する理解や遵守の状況 の4つの基準を定め、資源プラ協会が実施する専門家による審査において、この基準を満たすか否かが判定されます。 資源プラ製造装置認定(以下、装置認定と略します)は、資源プラを製造するのに十分な能力や機能を有する装置や機器、及び資源プラ製造の支援を行う装置や機器に関し、資源プラ協会による審査を経て認定するというもので、主に装置メーカーを対象とした制度です。 この認定制度においても有識者の諮問により認定基準が定められており、 (1)「資源プラ」という取り組みに対する理解と賛同が得られているか? (2)適切な処理能力や機能を有しているか? (3)マテリアルリサイクルに適した処理物を製造できるか? (4)処理の過程で周辺環境を汚染する事は無いか? (5)作業者が安全かつ衛生的な環境下で使用する事ができるか? (6)メンテナンス体制や応急対応は十分か? (7)法令や業界団体などで定める基準を満たしているか? (8)審査に必要な技術文書を提出しているか? の8つの基準に関する審査が資源プラ協会の専門家により行われます。 認定とか認証というと、「ISO(国際標準化機構)」や「JIS(日本産業規格)」の認証制度を思い浮かべる方が多いかと思いますが、資源プラ協会の行う資源プラ認定の制度はこれらの認証制度とはいささか趣を異にします。 実際の事業所認定、装置認定の審査においては、初めに資源プラ協会が派遣した専門知識を有する専門家から資源プラ制度に関する説明、資源プラ流通の現状と課題に関して詳細な説明を受けます。 そして質疑応答を交えながら資源プラに関する理解を深め、資源プラに関する賛同を得る事ができる様な合意形成を目指します。 この合意形成が出来た時点で、他の認定基準を審査していきます。 認定基準の具体的な審査は、審査対象となる事業所や装置・機器に関して予め提出して頂いた書類やサンプルなどを基に資源プラ協会の判定委員会によって定められた判定項目に基づく質疑応答により進められます。 この場合も互いに質疑応答による意思の疎通を深める事により課題や問題点を抽出しながら、「資源プラを製造する仕組みを有しているのか?」、「資源プラを製造する能力を有する装置であるのか?」などの点を審査する側と審査される側で共有しながら進めていきます。 つまり、ISOやJISの審査とは異なり、資源プラ認定制度は「共に資源プラを製造する仕組みを創り上げていく認定制度」であると言えるのです。 審査結果は後日、審査を担当した資源プラ協会の専門家の手により“第三者的な視点”で審査報告書の形でまとめられます。 この審査報告書の記述を基に資源プラ協会の理事から構成される判定委員会において認定も可否が吟味され、判定が行われます。 この様に資源プラ協会が実施する資源プラ認定制度は、審査対象となる事業所や装置メーカーと資源プラ協会の専門家が共に創り上げていく認定制度であるのと同時に、専門家による第三者的な視点による客観的な評価であるという側面も有しているのです。 事業所認定、装置認定の有効期限は3年で、引き続き認定を維持するためには更新審査を受ける必要があります。 これは認定後の3年の間に行われた改善点を評価したり、新たに生じた課題や問題点を抽出したりする目的がある訳で、資源プラ製造に向けた「継続的な取り組み」を促す意味合いがあります。 「共に創り上げ“続ける”認定制度」、これが資源プラ協会の行う資源プラ認証の大きな特徴であり、目的でもあるのです。
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